2026(令和8)年度 昭和文学会 第78回研究集会の開催と発表者募集のお知らせ

【2026年度 第78回研究集会開催のご案内】

2026(令和8)年度昭和文学会第78回研究集会を下記の通り開催いたします。
多くの皆さまのご参加をお待ちしています。

日時:5月16日(土)午後

会場:横浜市立大学 金沢八景キャンパス

開催形式:対面とオンラインによるハイフレックス(予定)

特集:見知らぬ〈宇宙人〉から身近な〈宇宙人〉へ ― 冷戦期から現在までの〈他者〉の変容 ―

【特集テーマ発表者の募集】

このたび会員各位の発表機会の維持、またそれによる大会企画の一層の多様化、充実化を期して、特集テーマ「見知らぬ〈宇宙人〉から身近な〈宇宙人〉へ ― 冷戦期から現在までの〈他者〉の変容 ―」の発表者を広く募集いたします。

企画趣旨文については、以下の「特集テーマ企画趣旨」をご覧ください。
発表は、会場(対面形式)で行うことを前提とします。
多くの方々のご応募をお待ちしています。

※ただし、応募は会員に限ります。

応募受付および締切:

Eメール添付による応募の場合

会務委員会アドレス kaimu@swbg.org

32日(月)2359分締切

郵送による応募の場合

〒101-0064 千代田区神田猿楽町2-2-3 NSビル302 笠間書院内

32日(月)必着

募集人数:1~2名

応募要項:①氏名、②所属、③発表題目、④要旨(1000~1200字)を明記したものを文書作成ソフトもしくは手書きで作成し、お送りください。Eメール添付の場合はPDFファイルに変換をお願いします。

その他:発表は1人30分。当日はシンポジウムがございますが、採択後に登壇の可否をおうかがいすることをあらかじめご了承ください。登壇していただける場合は事前ミーティング等への参加にご協力お願いします。また、旅費の補助はありませんが、非専任の方に限り印刷費の補助(上限3,000円)がございます。なお、発表に際して著作権等の確認はご自身で対応いただき、資料は事前提出をお願いいたします。

問い合わせ先:会務委員会 kaimu@swbg.org

【特集テーマ 企画趣旨】

特集:見知らぬ〈宇宙人〉から身近な〈宇宙人〉へ ― 冷戦期から現在までの〈他者〉の変容 ―

 〈宇宙人〉を描いた作品を考えるとき、H・G・ウェルズ『宇宙戦争』(1898)といった文学作品や、『未知との遭遇』(1977)といった映像作品まで、さまざまなものが思い浮かぶだろう。これまでSFジャンルを中心に多くの作品で、地球を侵略しようとする〈宇宙人〉との戦いや、未知の〈宇宙人〉との出逢いなどがくり返し描かれてきた。
 冷戦期の作品では、〈宇宙人〉が対立/友好の二項対立を前提とした集団的な存在として描かれた。たとえば、星新一の作品集『宇宙のあいさつ』(1963)では、地球の外部から現れるさまざまな〈宇宙人〉が描かれる。その〈宇宙人〉には、地球を支配しようとするものと、地球に恩恵をもたらそうとするものがいる。
 こうした〈宇宙人〉像は冷戦期の特徴として論じられてきた。長谷川功一『アメリカSF映画の系譜―宇宙開拓の神話とエイリアン来襲の神話―』(2005)は、アメリカのSF映画における侵略的な〈宇宙人〉が共産主義のメタファーだったと指摘している。また、木原善彦『UFOとポストモダン』(2006)によれば、地球に干渉して冷戦を解決に導いてくれる友好的な〈宇宙人〉には、冷戦問題に直面している人類が目指す理想像としての役割があった。
 しかし、1990年代に冷戦構造が崩壊すると、対立/友好という二項対立的な〈宇宙人〉像が変化していく。その変化はまず漫画・アニメ・特撮TVドラマなどのサブカルチャーの中で描かれるが、次第に文学の世界にも影響を及ぼしていく。たとえば、川上弘美『猫を拾いに』(2013)収録の「誕生日の夜」では、主人公の誕生日会にさまざまな〈他者〉が参加するが、その中に〈宇宙人〉もいることが当たり前のように描かれる。西加奈子『まく子』(2016)では、〈宇宙人〉を名乗る転校生の少女と、少年が出会う。映像作品などにも目を向ければ、サントリーBOSS『宇宙人ジョーンズ』シリーズのCM(2006~)には地球人にまぎれて生活の調査をおこなう〈宇宙人〉が登場し、近年の映画『宇宙人のあいつ』(2023)は家族が〈宇宙人〉だったという設定になっている。
 冷戦が終結した1990年代から現在までのポスト冷戦期の作品では、〈宇宙人〉がもともと地球の内部に存在し、ともに暮らしているという特徴が多く見られる。地球人の身近に存在する多様な〈他者〉として描かれ、生活のなかで葛藤しながら共生が模索されるのである。この隣人としての〈宇宙人〉像には、ポスト冷戦期におけるグローバル化、情報化、ダイバーシティなどの他者理解の枠組みの変化が影響していると考えられる。
 このように、冷戦期から現在までの〈他者〉としての〈宇宙人〉のあり方を概観すると、冷戦期に特徴的な対立/友好という二項対立的な〈他者〉像から、ポスト冷戦期における同一の生活圏に身を置き葛藤を抱えながら共に生きる〈他者〉像へと移行していく図式を見いだすことができる。一方で、この図式には必ずしも収まりきらない三島由紀夫『美しい星』(1962)のような作品もある。同作は冷戦期の作品でありながら、〈宇宙人〉が地球人にまぎれて生活する姿を描いており、ポスト冷戦期に顕著となる隣人としての〈宇宙人〉の特質を先取りしているとも読める。
 本特集では、〈宇宙人〉を通して〈他者〉の描き方の変化を考えるとともに、図式的理解を相対化しながら、連続や断絶、さらには多様な変奏についても考えていきたい。また、〈宇宙人〉というかたちで〈他者〉を表現すること自体の問題性についても考えたい。分断や対立が顕在化する現在において、〈他者〉としての〈宇宙人〉を改めて検討することは、〈他者〉との関係性や問題を再考するための批評的契機となるはずである。