2025(令和7)年度 昭和文学会 秋季大会の開催と発表者募集のお知らせ

【2025年度 秋季大会開催のご案内】

2025(令和7)年度昭和文学会秋季大会を下記の通り開催いたします。
多くの皆さまのご参加をお待ちしています。

日時:11月15日(土)午後

会場:奈良大学

開催形式:対面とオンラインによるハイフレックス(予定)

特集:「団地文学」の現在地

【特集テーマ発表者の募集】

このたび会員各位の発表機会の維持、またそれによる大会企画の一層の多様化、充実化を期して、特集テーマ「「団地文学」の現在地」の発表者を広く募集いたします。

企画趣旨文については、以下の「特集テーマ企画趣旨」をご覧ください。
発表は、会場(対面形式)で行うことを前提とします。
多くの方々のご応募をお待ちしています。
※ただし、応募は会員に限ります。

応募受付および締切:

Eメール添付による応募の場合

会務委員会アドレス kaimu@swbg.org

7月25日(金)2359分締切

郵送による応募の場合

〒101-0064 千代田区神田猿楽町2-2-3 NSビル302 笠間書院内

7月25(金)必着

募集人数:1~2名

応募要項:①氏名、②所属、③発表題目、④要旨(1000~1200字)を明記したものを文書作成ソフトもしくは手書きで作成し、お送りください。Eメール添付の場合はPDFファイルに変換をお願いします。

その他:発表は1人30分、シンポジウム形式を予定しているため、事前ミーティング等への参加をご協力お願いします。また、旅費の補助はありませんが、非専任の方に限り印刷費の補助(上限3,000円)がございます。なお、発表に際して著作権等の確認はご自身で対応いただき、資料は事前提出をお願いいたします。

問い合わせ先:会務委員会 kaimu@swbg.org

【特集テーマ 企画趣旨】

特集:「団地文学」の現在地

 団地は、昭和から令和の現在に至るまで、さまざまなかたちで表象されてきた。
 奥野健男『文学における原風景――原っぱ・洞窟の幻想』(1972年)の指摘に代表されるように、かつて殆どの団地の住民たちにとって団地は「仮りの住居」であり、「自分の恒常的な住居」や「(つい)(すみか)」にはならないとされた。しかし、奥野の指摘から約50年が経ち、団地が持つ意味は変容してきた。
 団地は戦後の急速に悪化する住宅事情を解消するために誕生し、主に大都市の郊外に造成された。「食寝分離」、「職住分離」といったサラリーマンの生活に代表される近代的なライフスタイルや、鉄筋コンクリート造りの集合住宅という新しい建築様式は人々に「輝かしい未来」を感じさせ、昭和30年代に庶民のあこがれの対象となった。やがて高度経済成長とともに団地の数が増加すると、団地は「内向の世代」が描いたようなリアルで画一的な日常の場へと変化していく。さらに日本経済の凋落や社会の高齢化が顕著となるにつれ、日本の停滞や衰退を象徴するものともなった。そして、高齢化が一層進んだ現在、一部の団地は社会的マイノリティが暮らす「限界集落」とも呼ばれる一方で、昭和レトロブームや大手資本によるリノベーションによって脚光が当てられるなど新たな展開を見せている。また、地方によっては貧困・被差別地域における地区改良事業の一環として建てられた改良住宅としての側面も持ち、近年は日本に移住した外国人コミュニティの増加にも伴って、時に偏見や排除の眼差しを向けられるなど、日本社会の縮図としての一面を持つ多様な居住空間となっている。
 団地は以上のような問題を内包するかたちで、その創成期から多くの作家によって取り上げられ、「団地文学」とも呼び得る作品が生み出されてきた。作中の団地には匿名性、閉鎖性、画一性といった側面があり、さらに共同体としての役割や団地ノスタルジーといった郷愁の対象となることもある。また、団地は純文学以外にも、SF、ミステリー、ホラー、あるいは漫画などの図像作品や、映画、ドラマ、アニメといった映像作品など多くのジャンルや表現で描かれており、都市や郊外、家族、ジェンダーなど多岐にわたる論点を提供してくれる。このようなジャンルや論点の幅の広さは、団地が持つ潜在的な物語の豊かさを示しているといえるだろう。
 2025年は、日本住宅公団(現:UR都市機構)発足70周年という団地をめぐる歴史においてひとつの節目の年に当たる。団地文学が現在の節目までにどのような物語を語ってきたのか。その変遷を検討し、現在地を明らかにすることで、団地がいま抱える問題を捉え直すことができるのではないだろうか。現在地から見える団地文学の未来についても議論したい。