2024(令和6)年度 昭和文学会 春季大会の開催と発表者募集のお知らせ

【2024年度 春季大会開催のご案内】

2024(令和6)年度昭和文学会春季大会を下記の通り開催いたします。
多くの皆さまのご参加をお待ちしています。

日時:6月8日(土)午後

会場:神奈川近代文学館

開催形式:対面とオンラインによるハイフレックス(予定)

※新型コロナウィルスの感染状況によっては、オンラインのみでの開催となります。

特集:文庫本というメディアをめぐって

【特集テーマ発表者の募集】

このたび会員各位の発表機会の維持、またそれによる大会企画の一層の多様化、充実化を期して、特集テーマ「文庫本というメディアをめぐって」の発表者を広く募集いたします。

企画趣旨文については、以下の「特集テーマ企画趣旨」をご覧ください。
発表は、会場(対面形式)で行うことを前提とします。
多くの方々のご応募をお待ちしています。

応募受付および締切:

Eメール添付による応募の場合

会務委員会アドレス kaimu@swbg.org

2月29日(木)2359分締切

郵送による応募の場合

〒101-0064 千代田区神田猿楽町2-2-3 NSビル302 笠間書院内

月29(木)必着

募集人数:1~2名

応募要項:①氏名、②所属、③発表題目、④要旨(1000~1200字)を明記したものを文書作成ソフトもしくは手書きで作成し、お送りください。Eメール添付の場合はPDFファイルに変換をお願いします。

その他:発表は1人30分、シンポジウム形式を予定、旅費の補助なし、非専任に限り印刷費の補助あり(上限3000円)。

問い合わせ先:会務委員会 kaimu@swbg.org

【特集テーマ 企画趣旨】

特集:文庫本というメディアをめぐって

 日本独自ともいえる文庫本の歴史のはじまりは明治30年代に登場した袖珍本とされるが、現在の文庫のかたちを定着させたのは昭和2年創刊の岩波文庫である。その成功を受け、多くの出版社が文庫を創刊した結果、文庫本市場は多様なものとなり、いまでは各出版社が独自色のレーベルを持っている。
 文庫本の最大の特色として、コンパクトで持ち運びやすく、廉価で手に取りやすいことが挙げられる。いわゆる「名作」を流布本として人びとに広く届け、時としてその権威づけに貢献し、また文学ジャンルへの「入口」として機能するなど、文学の制度的な支柱として文庫が機能してきたのは、その特色と深く関係しているだろう。1970年代後半にはじまる角川書店を中心とする映画やテレビを通した大量宣伝からなるメディアミックス戦略以降、各出版社の「夏の文庫フェア」や多種多様なメディアと結びついたカバーなどによって、文学は商品としての側面を強くしてきたが、そのなかで文庫の存在感は決定的なものとなっていった。以前はハードカバーなどですでに出版されている書籍を文庫本として再販することが一般的だったが、近年では書き下ろしの文庫も増え、価格の上昇とともにその価値ひいては権威性はますます高まっている。ライトノベルにみられるように、レーベルがジャンルを枠づけてしまう点においても、現在の文学の出版において文庫の果たす意味は決して小さくはない。このような文庫をめぐる出版文化の歴史を対象化することは、文庫が文学の生成、ならびに作品と読者を結び合わせる言説空間の生成に対してどのように寄与し関わり合っているのかを紐解くことに繋がるのではないだろうか。
 一方、文庫本に挿入されたイラスト、著者近影などは文学作品の解釈に少なからず影響を与える。そこに付された注釈や解説についても同様である。それらが広く流布することは、読者の解釈=意味生成の場に何らかの支配的な力が加わることを意味している。また、同じ作品が複数のレーベルから出版される機会が多いのも文庫の特色のひとつだが、装幀やレイアウトは文庫ごとに異なり、時には本文が違っていることもある。作品の内容やイメージに関わるこれらの要素について比較検討することは、文庫を長所・短所それぞれの視点から捉え直す可能性を秘めているだろう。
 電子書籍が親しまれるようになり、オーディオブックも人気を博している現在、文庫の意味は将来的に変化していくかもしれないが、それらの底本となるのはやはり文庫本がほとんどだ。文庫本というメディアの存在意義や歴史性・特異性を明らかにする研究や、強い影響力を持つがために生み出される文庫の功罪について多角的に検証する研究を願っている。