2023(令和5)年度 昭和文学会 秋季大会の開催と発表者募集のお知らせ
【2023年度 秋季大会開催のご案内】
2023(令和5)年度昭和文学会秋季大会を下記の通り開催いたします。
多くの皆さまのご参加をお待ちしています。
日時:11月11日(土)午後(開始時間未定)
会場:追手門学院大学 茨木総持寺キャンパス
開催形式:対面とオンラインによるハイフレックス(予定)
※新型コロナウィルスの感染状況によっては、オンラインのみでの開催となります。
特集:女性の/とエッセイ再考
【特集テーマ発表者の募集】
このたび会員各位の発表機会の維持、またそれによる大会企画の一層の多様化、充実化を期して、特集テーマ「女性の/とエッセイ再考」の発表者を広く募集いたします。
企画趣旨文については、以下の「特集テーマ企画趣旨」をご覧ください。
発表は、会場(対面形式)で行うことを前提とします。
多くの方々のご応募をお待ちしています。
応募受付および締切:
Eメール添付による応募の場合
会務委員会アドレス kaimu@swbg.org
8月3日(木)23時59分締切
郵送による応募の場合
〒101-0064 千代田区神田猿楽町2-2-3 NSビル302 笠間書院内
7月31日(月)必着
募集人数:1~2名
応募要項:①氏名、②所属、③発表題目、④要旨(1000~1200字)を明記したものを文書作成ソフトもしくは手書きで作成し、お送りください。Eメール添付の場合はPDFファイルに変換をお願いします。
その他:発表は1人30分、シンポジウム形式を予定、旅費の補助なし、非専任に限り印刷費の補助あり(上限3000円)。
問い合わせ先:会務委員会 kaimu@swbg.org
【特集テーマ 企画趣旨】
特集:女性の/とエッセイ再考
「エッセイ(essay)」という語が「随筆」の意味に収斂し、それにかわる文芸ジャンルの名称として定着するのは、いつからであろうか――。ターニングポイントの一つとなったのは1951(昭和26)年の日本エッセイストクラブの創設であろうが、そこでは「試論」や「論説」など、「随筆」の類似イメージとしてよりも幅広い種々の文章を指す語として「エッセイ」があったといえる。しかし1970年代末から80年代になると、これまでの文壇とは異なる文脈からの書き手や表現によるエッセイが登場・定着し、数々の話題作やベストセラーを生んだ。近現代の文学史においても、また現行の出版界においても、エッセイという文芸ジャンルは確かな存在感を持っているが、これまでエッセイが文学研究の主題として論じられる機会は極めて少なかった。本企画は、そのようなエッセイを議論の俎上に載せ、その表現の変遷や社会的に果たしてきた役割について再考を目指すものである。
とりわけ注目したいのが、女性の書き手によるエッセイである。その歴史は「随筆」や「小品」と主に呼ばれた時代も含め、与謝野晶子や森田たま、林芙美子、幸田文、森茉莉、田辺聖子らによって連綿と紡がれてきた。とくに1980年代には、林真理子『ルンルンを買っておうちに帰ろう』(1982)や群ようこ『午前零時の玄米パン』(1984)などに代表される「自虐」を交えた「飾らない、ありのままの、ふつうの私」を表現するような文体が登場し、女性エッセイのモードを変えていった。こうした「ふつう」の女性たちによる「自虐」や「暴露」というスタイルは、読者である女性たちを勇気づけることもある一方で、女性たちの対立を煽り、分断を生むこともあった。しかし近年においては酒井順子『負け犬の遠吠え』(2003)や雨宮まみ『女子をこじらせて』(2011)、ジェーン・スー『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(2014)など、多様化した女性たちの生き方やそれゆえの生きづらさに言葉を与えるような、エンパワーメントとしての側面をより強く持った作品が登場してきている。「ふつう」の女性たちの生き様を語ってきたこれらの女性エッセイは、時に小説以上に多くの読者を獲得し、影響力を持ってきたといえよう。
しかしこれまでの文学場において、これらのエッセイは「軽いもの」「文学的ではないもの」とみなされ、男性作家によるもの以上に、文学研究の対象としては扱われてこなかった。小説家によるエッセイの場合でも、作家の思想的背景の裏付けや小説読解のための補助的資料として扱われることがほとんどであったのではないか。だが、これらの女性エッセイには、評論や小説とは異なる位相の言葉で以て社会にアクセスしてきたという点で、文学史・ジェンダー史上における重要な意味があるといえる。彼女たちの時に挑発的なしたたかさやしなやかさを持った言葉、それゆえに生起する読まれることへの自覚とそれがもたらす語りのゆらぎ、そしてそれを発表するメディアや読者との関係のあり方。それらからは文学研究の主題たり得る様々な論点が提起できるはずである。女性とエッセイを多角的な視点から考察する、意欲的な研究を期待している。