2017(平成29)年度 昭和文学会 秋季大会

2017(平成29)年度 昭和文学会 秋季大会

特集 モダニズム詩人の戦後と昭森社 

日時 11月18日(土)午後1時より

会場 関西学院大学 西宮上ケ原キャンパス 文学部本館1号教室
(〒662-8501 兵庫県西宮市上ヶ原一番町1−155)

大会概要、アクセスなどはこちらを参照ください。

開会の辞

大橋 毅彦(関西学院大学文学部教授)

【研究発表】
書物という視角から考える――モダニズム詩の戦前と戦後

村山 龍

〈現代詩〉についての覚書
メモランダム
――モダニズム詩の再評価と『本の手帖』

小泉 京美


【講演】
リトルプレスとモダニズム詩人

内堀 弘

【シンポジウム】

ディスカッサント 鈴木 貴宇

閉会の辞

一柳 廣孝(代表幹事)

 

司会 大川内 夏樹・宮崎 真素美

 

※終了後、関西学院会館レセプションホールにて懇親会を予定しております。予約は不要、当日受付にてお申し込み下さい。

 
【企画趣旨】
日本のモダニズム詩人たちは、1920年代から30年代にかけて華々しい活躍を見せた。それらの詩人たちは、戦後においてもなお旺盛な活動を継続し、さまざまな文化的側面に影響を及ぼし続けたが、そうした「モダニズム詩人の戦後」に着目し、論究される機会は、これまで決して多いとは言えなかった。そこで本企画においては、戦後、モダニズム詩人たちの活動の舞台となった「場」に着目し、「モダニズム詩人の戦後」について検討したい。
彼らは、戦後、出版メディアをめぐる新たな状況が生まれてくる中で、どこに活動の「場」を求めたのか。また、その再評価は、いかなる「場」においてなされたのか。このような視点から「モダニズム詩人の戦後」を考えようとする場合、「昭森社」という出版社の存在が浮かび上がってくる。1935年に森谷均がはじめた昭森社は、創業当時からモダニズム詩との結びつきが強く、戦後においても、モダニズム詩と関わりの深い、あるいは、深かった詩人たちの詩集を多く刊行し続けた。そして、1961年に同社から創刊された雑誌『本の手帖』では、「日本におけるシュルレアリスム」をはじめとするモダニズム特集が多数組まれており、戦後におけるモダニズム再評価の一翼を担うことになった。
また、このモダニズム詩と昭森社との結びつきという問題は、モダニズム詩と「リトルプレス」と呼ばれる個人編集を専らとする少部数出版物との関わりという、より大きな問題へとつながっていく。昭森社を含め、1920年代以降、印刷技術の一般化に伴い、こうしたリトルプレスを手掛ける出版社が数多く現れ、モダニズム詩人たちは、これらの出版社と協力関係を築くことで、部数は少ないながらも、魅力的な詩集や詩誌を世に送り出した。本企画では、「ひとり出版社」と呼ばれる現代の小規模出版社の活動へと続いていくリトルプレスの精神史を見据えながら、モダニズム詩とリトルプレスの関係についても考えてみたい。
以上のように、本企画は、昭森社という「場」を一つの視座とすることによって、戦後、モダニズム詩がどのように継承/断絶されたのかを検討し、戦後におけるモダニズム詩の位置づけに関して問い直しを図るものである。

 

【講演者略歴】
内堀 弘(うちぼり・ひろし)
1954年生まれ。古書店「石神井書林」店主。1920~30年代のモダニズム関連文献を扱う。著書に、『ボン書店の幻 モダニズム出版社の光と影』(白地社、1992年/ちくま文庫、2008年)、『石神井書林日録』(晶文社、2001年)、『古本の時間』(晶文社、2013年)。共著に『日本のシュールレアリスム』(世界思想社、1995年)ほか。

 
【発表要旨】
書物という視角から考える――モダニズム詩の戦前と戦後

村山 龍(むらやま・りゅう、慶應義塾大学非常勤講師)

1920年代後半から春山行夫や西脇順三郎、北園克衛らによって切り拓かれたモダニズム詩の地平は「大東亜戦争」を経由して、戦後の鮎川信夫らの荒地派へと批判的に継承された。北川透が指摘するように荒地派は「文明批評的性格」を打ち出すことによって戦前のモダニズム詩との方法論的切断を図ったとされているが、〈近代〉なるものへの問いという根本的な視角においては戦前も戦後も通じるものだと考えられる。両者は全く異なる問題系に分かたれたのではなく、同じ問いに対して異なる解法を用いようとしたのではなかったか。そこで本発表では戦前から戦後にかけてのモダニズム詩の展開と接続を、書物というモノを媒介にして検証する。日本のモダニズム詩がフォルマリズムの影響下にあったことを考慮すれば、書物というフォルム(形式)もまた彼らにとって無視できないモノであったはずだ。モダニズム詩人が戦前・戦後ともに昭森社などのリトルプレスを主な活躍の場としたことの検討を通じて、モダニズム詩の相貌をあらためて照らし出したい。
 

〈現代詩〉についての覚書(メモランダム)――モダニズム詩の再評価と『本の手帖』

小泉 京美(こいずみ・きょうみ、武庫川女子大学)

1950年代半ば以降、『現代詩』『ユリイカ』『現代詩手帖』と、詩の総合雑誌の創刊が相次ぐ。続いて創刊された昭森社の書物雑誌『本の手帖』(1961~69年)は、北園克衛が構成を手がけ、モダニズム特集を数多く組んだことで知られる。これら詩壇ジャーナリズムの形成は、戦後詩の歴史化と新たな詩的世代の登場を支え、戦前のモダニズム詩再評価の機運にも寄与した。
戦後十余年を経た詩の歩みは、世代間のヘゲモニー争いを越えて、詩的言語の本質を原理的に問い直す時期に達していた。だが、それはモダニズムから反モダニズム、そしてモダニズムの再評価へという単線的な過程ではなかった。〈現代詩〉の構想は先行する第一次戦後派(=反モダニズム)への対抗として、自らの根源に戦前のモダニズムを新たに発見するという屈折した歴史意識の上になされ、その歴史観は今日に引き継がれている。本発表では『本の手帖』を中心にモダニズム詩が投げかけた問題を考えたい。
 
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秋季大会の出版社出店について
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